「必要なもの」という章では、千野先生が「神様」と仰ぐS先生とR先生の会話が紹介されています。
「ねえ、S。この頃何か勉強しているかい?」
「いや、何も勉強していないよ。ところでR、お前の方
は?」
「このところ勉強はしていないんだが、ギボンの『ロー
マ帝国衰亡史』は読み上げたよ」
「そう、そういえば僕もプルーストの『失われた時を求
めて』は読んだな」
『ローマ帝国衰亡史』は「英語で全6巻もある大著」で、『失われた時を求めて』の方は最新の岩波書店の翻訳だと11巻にもなる、誰もが(名前だけは)知っている大小説ですね。まさに雲の上の神々の会話です。
そんなS先生に誰もが聞きたい質問を、千野先生がしました。
「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょ
う」
「それは二つ、お金と時間」
なんとシンプルな。これを読んで、大学生だった僕は衝撃を受けました。語学に必要なのは「お金と時間」。なるほど、そうなのか。
さてそうであるとすれば、では次の疑問は「どれくらいの時間とお金が必要なのか」ということでしょう。
時間に関しては個々人の事情にもよるので、断定的なことは言えません。『外国語上達法』にも目安となる時間は書かれていません。総量としては、100時間やれば100時間分、500時間やれば500時間分上達するだろうということです。なんとも毒にも薬にもならない言い分ですが、ただ、勉強に費やした時間に比例して語学は上達するというのはとても重要です。
なぜなら、お金については同じことが言えないからです。留学は語学の必須条件なのでしょうか。教材を片っ端から買い集めて、英会話学校に高いレッスン料(例えばここなど)を払いさえすれば英語ができるようになるのでしょうか。無論答えはNoです。それならば、お金持ちはみな英語の達人になっているはずです。
語学にお金は間違いなく必要です。便利なフリーの教材は確かにありますが、それらが束になっても足元にも及ばないような素晴らしい教本が世の中には存在します。有益な情報には対価が必要です。
不当に高いお金をかける前に、価値のある本を買い揃え、それらをじっくり時間をかけて勉強するのが急がば回れで、結局一番の近道だと思います。お金は必要ですが、数千円から数万円程度でも相当のことができます。お金のハードルはさほど高くない言って差し支えないかと思います。それよりも必要なのは時間と努力、そしてそれを支えるモチベーションです。このブログは、この点を出発点とします。
注意しなければいけないのは、時間を費やすことは即ち善ではないということです。間違った勉強法で勉強してもよくて意味はないか、悪いと間違った癖が身についてしまうかのどちらかでしょう。中途半端に英語をやるのであれば、全くやらない方がよっぽどいいとさえ思います。
何事も最初に全体像を掴んでおくと、心理的にとても楽になります。その意味で、『外国語上達法』はマストな本です。
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