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2018年2月28日水曜日

紙の単語カード(ノート)は効率的か

今回は僕の失敗談を通じて、単語学習の効率について考えたいと思います。

就活生の「バイブル」とも言われる『絶対内定』シリーズ。その著者である故杉村太郎氏が書いた『TOEICテスト900点・TOEFLテスト250点への王道 』という本があります。少し古い本ですが、今見たら111という、英語学習法に関する書籍としてはなかなか驚異的な数のレビューがついています。英語学習法は新しい方が良いということはないので、同書は今見ても示唆深いものがあります。特に著者の勉強の徹底ぶりは率直に頭が下がる思いがします。「英語は簡単というのは共同幻想」というのが、これを見てもよく分かります。努力なくして、外国語は身につきませんね。

さて、同書では様々な学習のノウハウが紹介されており、その一つに「単語カード」を使った単語暗記法があります。いわく、基本的には市販の単語帳を繰り返し眺め(杉村本はアメリカ留学のためのTOEFLテスト対策を主眼としています)、どうしても覚えられない単語に関してはカードに書き写し覚えるというものです。

実は僕は大学生の時、杉村氏が主宰する英語塾の短期集中コースを受講し、杉村氏ご本人にも少しだけお会いしたことがあります(エネルギッシュな方で、その日はサーフィン帰りでした)。そんなこともあってか僕も単語カードは相当の数を作りました。ちょっとご紹介しますと、こんな感じです。



だいたいタバコ箱より少し大きいくらいのサイズのカードです。文房具屋で大量に買いました。表面には覚えたい単語を書きます。自分が読めればいいという思いで書いているので字が随分と汚いですが、少々ご辛抱ください・・・


裏面には日本語で単語の意味と、例文を書いています。「The best --- I could think of〜」と横線が引いてあるのは、少しでもカードを書く負担を減らすために見出し語(expedient)を書くのを省略しているためです。


別のカードでは例文を集めています。



「catch 〜 out」という熟語を覚えるためのカードのようですね。下段は定義です(ちなみにsbはsomebody、つまり「人」です)。英英辞典から例を引いてきているようなので、おもての日本語訳は自分で考えたんだと思います。


更には単語だけでは飽き足らず、文法学習にもカードを活用しました。

右下の「p.14」は読んでいた文法書のページ数です。


ごちゃごちゃ書いてありますが、つまり「fishのような集合名詞は、単数系も複数系も語形が変化しない」という文法項目があり、それにまつわる例文を書いています。

これをどう使うかというと、文法を強く意識しながら例文を音読、暗唱します。具体例を通じて、ケーススタディで文法を学ぶという方法です。僕は江川泰一郎『英文法解説』という本をこの方法で通読しました(名著です)。読んでいて少しでも「へー」と思ったことはすぐさまカードに書き写し、後日(朝の頭が冴えている時間に)まとめて音読しました。

どのカードも複数回音読しましたし、覚えられないカードはそれだけを集め、また音読・・・ということを繰り返しました。大学生で時間があったのでできた方法だと思いますが(半年くらいかかったような)、かなり効きました。これを終えた時には洋書が随分と読めるようになっていて、しばらくは本の内容よりも英語の本が読めるという事実に興奮してひたすらに多読をしていました。やればやるほど英語力がつくということが感じられ、英語学習が完全に軌道に乗り、語学力がメキメキ伸びた時期だったと思います。

そんなこんなで単語カードはどんどんたまりました。

千枚は間違いなく超えています。カードを買うのは文房具屋まで行かないといけないしそれなりにお金もかかるし、書くのも時間はかかるし手が疲れて大変だけど、間違いなく効果を実感していたので頑張って作り続けました。

・ ・ ・

何もカードを頑張って作ったことを自慢したくてこんなことを書いているわけではもちろんありません。そうではなく、電子辞書を触っていたある時、ふと気付いてしまったのです。「あれ、カードでやっている作業、電子辞書なら一瞬できるじゃん」と。

例文という具体例を中心に単語や文法項目を覚えられるという点では、紙のカードやノートなどに書き写す方法は理にかなっていると思います。しかしながら、カードを作る作業が大変すぎました。書いただけでは単なる作業なのでそこで終わってはダメですが、紙だとそこで終わってしまいかねません。単語や文法はとにかく相当な数になるので作業効率は非常に重要です。勉強方法の改善は常に意識しなければなりませんが、その点で紙のカードやノートには大きな限界があったのです。

それと比べ、電子辞書を使った方法は圧倒的に作業負担が少なく、肝心要の覚えることに時間を割けます単語なんてボタンを押すだけです。例文を探すのは少し時間がかかりますが、カードに比べたら全然あっという間です。これを思いついた時は我ながら革命的だと思いました。どんな本にも書いていない、すごいことを思いついてしまったという興奮とともに、今までカードに費やしてきた時間はなんだったんだという、笑いたいような泣きたいようなよくわからない気分でした。

カードやノートも悪くはありません。実際に僕は大きな恩恵を受けました。例文中心に覚えるという、学習法の核心部分を思いついたのは、カードのおかげです。ただ、せいぜい数百枚程度が限度だと思います。僕がやったように「この本に書いてあることを片っ端から覚えたい」という場合なら、カードは有効です。僕自身、割と最近も、冠詞についての本を読んで、とてもよい例文がたくさん載っていたので、それらをPCで書き起こして印刷し、音読するということをしました。それなりに時間はかかりましたが、とても有益だったと思います(いつかご紹介します)。しかし単語となると下手すると数千単位で覚えなければならないため、またカード1枚には収まらない単語も多々あるため、英単語をカードで覚えるのは非効率でお勧めできません

調べるだけならアプリなど便利なツールも出ていますが、単語学習のためなら電子辞書の優位は揺るぎません。僕はやはり電子辞書が最高の単語学習ツールだと断言したいと思います。


2017年12月14日木曜日

2-6 単語帳は1秒でできる!? 電子辞書で例文を探して登録しよう

以前のポストで、単語を電子辞書に登録する方法を説明しました。いよいよこの資産を活用する方法、すなわち例文を集める方法を説明します。最初は複雑に見えるかもしれませんが、慣れればとても簡単にサクサクとよい例文が集められてしまいます





includeの画面を開いてください。次の画面に進みます。










画面では見づらいですが、Sexist and racist jokes should never be included in a speech. 「性差別的・人種差別的な冗談はスピーチに入れてはいけない」という例文が選択されています。わかりやすい、よい例文ですね。




この要領で例文をどんどん見ていき、少しでも「へー、面白いな」、「こんな使い方するんだ、知らなかったな」と思ったものは登録しましょう。続けてincludeの例文を探してみます。

Lunch is not included in the price. 
「ランチは値段に含まれておりません」。

⇨自然な、いい英語ですね。意識的に勉強しないと、日本人にはまず言えるようにはならない英語です。ジーニアスは日本語訳も小慣れていますね。もちろん登録しましょう。


Japan includes these four main islands. 
「日本にはこれら4つの主な島がある」《◆全体の一部として含む意;全体を含む場合はcomprise: Japan comprises these four main islands and many other smaller islands. 日本はこれら4つの主な島とその他多くの小さな島から成る》

⇨今度の例文はフォーマルな文体ですね。compriseという別の動詞との比較で、語法の説明が加わっています。これも登録だな・・・といったように、自分が面白いと思った例文をどんどん登録していきましょう。面白いと思った例文は読んでいて楽しいですし、単語だけを連呼する方法よりも圧倒的に効率的に頭に入ります



さて、例文がどのようにストックされているかを確認しましょう。ほぼ単語を登録する方法で見たときと同じです。



「メニュー/学習帳」ボタンを2回押し、「単語帳」を開きます。



















[F] 例文帳(英語)を選択します。






















上で見た例文が3つとも登録されていますね。

いくつ登録するかですが、これは1日にどれだけ勉強時間を確保できるかによると思います。僕の場合、1日にこなすのは30例文程度に落ち着きました。夜に例文を集めて、朝起きたら朝一で音読するというサイクルを回して、合計で45分から60分くらいかかるイメージでしょうか(最高で1日に90例文暗唱したことがあります。965を取ったTOEICの前日で、脳を英語にしようと思ってやったのですが、さすがに口が相当疲れました)。もちろん始めは無理なく10例文とか1単語から始めて、
慣れてきたら徐々に増やしてみるでももちろんOKです。重要なのは続けることです。まずは量よりも質を重視しましょう。しっかりと意味をイメージしながら音読をするということですね。

2017年12月7日木曜日

2-5 例文を集めるには、どうすればいい?

覚えたい単語があれば、その単語を含む良質な例文を探してきて、それを音読することが大事だと書きました。では良質な例文はどうすれば見つけられるのでしょうか?

いくつか方法を考えます。まず、例文を多く挙げている単語帳が市販されていればいいのですが、残念ながら見あたりません。よく出る単語を並べて日本語の意味を添えているだけの単語集を見ると筆者はフラストレーションを感じるところなのですが、収録単語が数千とあって、それぞれに例文をいくつも載せることは体裁上不可能というのも理解できます。

読んでいて出会った文章をノートやパソコンにストックする方法というのもあります。ぜひともストックしておきたい名文などならよいと思います。しかし実用レベルを目指すとなると単語数だけでも数百、数千(それ以上?)にのぼります。それを読書をしていて知らない単語に出くわす度にノートに取っていては、そもそも読書になりませんし、ボキャビルの観点から見ても残念ながら時間的な効率が良くないと思います。またノートを作るだけで疲れてしまったり満足して見直さなかった場合(結構ありがちな話ではないでしょうか・・・)、一回書いただけで覚えられるようにヒトの脳はできていないので、ノートに費やした時間は無駄になってしまいます。この理由から、ノートで単語帳を作ることはお勧めしません。

そこで強くお勧めしたいのが、電子辞書です。以下の二つの機能を活用すれば、効率的に良い例文を集められます。

  1. 覚えたい単語を単語リストに登録する(単語帳の作成)
  2. 登録した単語を元に、例文検索をし、気になった例文を登録する(例文登録)

最近は辞書のアプリや、またスマホの辞書も大変便利で、利用されている方も多いかと思います。筆者もその一人ではありますが、ボキャビルという観点からすると電子辞書が圧倒的に勝るツールはありません。このエントリーでは具体的な活用方法まで書けませんでしたが(すいません)、いよいよ具体的な方法を順を追って説明していきます。




2017年12月6日水曜日

2-4 なぜ音読が必要か?

イメージと英語がダイレクトにリンクした状態について説明しました。さて、うまくこの状態までたどり着いても、ただ英語を眺めているだけでは残念ながら記憶には定着しません。英語を頭に入れるためには、何回か音読してみましょう!

なぜ音読なのでしょう。音読の意義については国広正雄氏の『英語の話し方』という本で詳説されています。国広先生は「同時通訳の神様」と呼ばれた方で、「只管朗読」という勉強法を紹介されました。やり方はいたってシンプル、「意味が一通りわかった英文をひたすら音読す」るというものです。中学校の教科書を「おそらく一つのレッスンについて平均五百回、課によっては先回も読んだろうと思います」というのだから、信じがたい努力の量です。

『英語の話し方』は私のバイブルです。少し古い本ですが、内容は全く古びていません。友人に英語学習法で一冊だけ挙げろと言われたら、いつも迷わずこの本を勧めています。

私自身も「只管朗読」をやり(最高でも一つのテクストを70回程度でしたが・・・)、その驚きの効果に音読の効果を体感し、そこからここで紹介をしているボキャビル方法を着想しました。

それはさておき、単語を覚えるときは、意味をイメージしながら、一語一語噛みしめるように、ゆっくりと音読してみましょう。

注意して欲しいのが、機械的に音読してはいけないという点です。回数を重ねることは目的ではありません。

そうではなく、アナウンサーや俳優にでもなったつもりで、時には身振り手振りを交えながら、英語を音読することが肝心です。繰り返しますが、この時日本語は一切頭の中にあってはいけませんよ!



語学習得に魔法はあるか 〜語学に必要な二つのもの〜

英語を勉強をする上で、僕が最も影響を受けたほんの一つが『外国語上達法』という本です。著者の千野栄一氏は当時、東京外大の教授。

「必要なもの」という章では、千野先生が「神様」と仰ぐS先生とR先生の会話が紹介されています。

  「ねえ、S。この頃何か勉強しているかい?」
  「いや、何も勉強していないよ。ところでR、お前の方
   は?」
  「このところ勉強はしていないんだが、ギボンの『ロー
   マ帝国衰亡史』は読み上げたよ」
  「そう、そういえば僕もプルーストの『失われた時を求
   めて』は読んだな」

『ローマ帝国衰亡史』は「英語で全6巻もある大著」で、『失われた時を求めて』の方は最新の岩波書店の翻訳だと11巻にもなる、誰もが(名前だけは)知っている大小説ですね。まさに雲の上の神々の会話です。

そんなS先生に誰もが聞きたい質問を、千野先生がしました。

  「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょ
   う」
  「それは二つ、お金と時間」

なんとシンプルな。これを読んで、大学生だった僕は衝撃を受けました。語学に必要なのは「お金と時間」。なるほど、そうなのか。

さてそうであるとすれば、では次の疑問は「どれくらいの時間とお金が必要なのか」ということでしょう。

時間に関しては個々人の事情にもよるので、断定的なことは言えません。『外国語上達法』にも目安となる時間は書かれていません。総量としては、100時間やれば100時間分、500時間やれば500時間分上達するだろうということです。なんとも毒にも薬にもならない言い分ですが、ただ、勉強に費やした時間に比例して語学は上達するというのはとても重要です。

なぜなら、お金については同じことが言えないからです。留学は語学の必須条件なのでしょうか。教材を片っ端から買い集めて、英会話学校に高いレッスン料(例えばここなど)を払いさえすれば英語ができるようになるのでしょうか。無論答えはNoです。それならば、お金持ちはみな英語の達人になっているはずです。

語学にお金は間違いなく必要です。便利なフリーの教材は確かにありますが、それらが束になっても足元にも及ばないような素晴らしい教本が世の中には存在します。有益な情報には対価が必要です。

不当に高いお金をかける前に、価値のある本を買い揃え、それらをじっくり時間をかけて勉強するのが急がば回れで、結局一番の近道だと思います。お金は必要ですが、数千円から数万円程度でも相当のことができます。お金のハードルはさほど高くない言って差し支えないかと思います。それよりも必要なのは時間と努力、そしてそれを支えるモチベーションです。このブログは、この点を出発点とします。

注意しなければいけないのは、時間を費やすことは即ち善ではないということです。間違った勉強法で勉強してもよくて意味はないか、悪いと間違った癖が身についてしまうかのどちらかでしょう。中途半端に英語をやるのであれば、全くやらない方がよっぽどいいとさえ思います。


何事も最初に全体像を掴んでおくと、心理的にとても楽になります。その意味で、『外国語上達法』はマストな本です。


2-3 音読するなら、よい例文を!

言葉の意味を具体的にイメージしながら、音読することについて説明しました。では、単語を効率的に覚えたければ、その単語一語だけ音読すれば良いのでしょうか?

答えはNOです。覚えたい単語、例えば(何でもいいですが)involve, involve, involve…therefore, therefore, therefore, と何回音読したとしても、覚えられる気がしない…ですよね(少なくとも筆者には無理です)。

覚えたい単語があれば、短くて良質な例文を音読することが極めて重要です。理由は2つ。

第一に、コンテクスト(文脈)で覚えた方が意味をイメージしやすいです。たとえば「skid(スリップする)」という単語を覚えたいとして、

The car skidded on a slippery road into the wall.

「車が道で滑って壁に突っ込む」という具体的な絵が浮かぶ、良い例文ですね。

これに対し覚えたい単語のみ、ここではskid, skid, skid…と声に出すのと、どちらがskidという単語の意味をイメージしやすいでしょうか?

2つ目の理由として、単語のみ音読する方法だと、「多義語」に対応できません

多義語とは、複数の意味を持つ単語のことです。takeやgo、get などがそうです。多義的な英単語は枚挙に暇がありません。多義的な単語は、それぞれの意味に応じてよい例文で文脈も踏まえて覚えない限り、対応のしようがありません。単語帳などで、多義語のエントリーがあって、その意味が羅列してあるだけのものなど、筆者からすれば不親切極まりなく見えます。

まとめると、覚えたい単語があれば、その単語を含む良質な例文を探してきて、それを音読するようにしましょう。では、どうしたら効率的に例文を集められるのでしょうか?次回からはいよいよ具体的な方法に入っていきます!



2-2 英単語とイメージを直接結びつけるって?

イメージと英語をダイレクトにリンクさせると書きました。この点をもう少し掘り下げていきましょう。

例えばあなたの目の前に、赤くて甘い、青森などでよく取れる丸い果物があったらなんと呼びますか?


日本語のネイティブスピーカーなら、もちろん「りんご」ですね。では「りんご」を英語で何と言うのか知らなかったとして、辞書で調べたらなるほど、「apple」というのかと初めてわかりました。これを暗記したい場合を考えてみましょう。

この時一番まずい覚え方が、「りんご」という日本語と「apple」という英単語をリンクさせようとする方法です。りんごappleりんごappleりんごapple…とノートに書きなぐる方法がありますが、これは初学者の方(中学生など)を除きお勧めできません。

なぜならこの方法だと、イメージ(赤い果物)にたどり着くまでに、一度日本語(「りんご」)を経ないといけないからです。

図)赤い果物のイメージ⇨「りんご」⇨「apple」

これだと東京から大阪に行くのにわざわざ金沢を経由しているようなもの(?)で、どんなに頭の回転の速い人でも情報の処理に致命的なロスが生じます。

そうではなくて、目指すのは以下の状態です。

図)赤い果物のイメージ⇨「apple」!

Hello.やThank you.なら出来ていますよね。これらの英語を言う時にいちいち「こんにちは」「ありがとう」という日本語を思い出さずに言えると思います。これをすべての英語に応用するのです。

そのため、単語カードを買って表に英単語を、裏には日本語の訳語を書く方法は残念ながら非常に非効率と言えます(筆者も実は数千枚作ったことがあるのですが、このことに気づいた時はショックでした)。先ほどのノートに書き殴る方法にも言えることですが、そらんじる方が手も疲れませんし、声に出すだけなので時間的にも効率がいいです。

英語を読むときはこのように、日本語を頭の中から完全に追い出して、意味と英単語が直結するよう意識をキープしましょう。