就活生の「バイブル」とも言われる『絶対内定』シリーズ。その著者である故杉村太郎氏が書いた『TOEICテスト900点・TOEFLテスト250点への王道 』という本があります。少し古い本ですが、今見たら111という、英語学習法に関する書籍としてはなかなか驚異的な数のレビューがついています。英語学習法は新しい方が良いということはないので、同書は今見ても示唆深いものがあります。特に著者の勉強の徹底ぶりは率直に頭が下がる思いがします。「英語は簡単というのは共同幻想」というのが、これを見てもよく分かります。努力なくして、外国語は身につきませんね。
さて、同書では様々な学習のノウハウが紹介されており、その一つに「単語カード」を使った単語暗記法があります。いわく、基本的には市販の単語帳を繰り返し眺め(杉村本はアメリカ留学のためのTOEFLテスト対策を主眼としています)、どうしても覚えられない単語に関してはカードに書き写し覚えるというものです。
実は僕は大学生の時、杉村氏が主宰する英語塾の短期集中コースを受講し、杉村氏ご本人にも少しだけお会いしたことがあります(エネルギッシュな方で、その日はサーフィン帰りでした)。そんなこともあってか僕も単語カードは相当の数を作りました。ちょっとご紹介しますと、こんな感じです。
だいたいタバコ箱より少し大きいくらいのサイズのカードです。文房具屋で大量に買いました。表面には覚えたい単語を書きます。自分が読めればいいという思いで書いているので字が随分と汚いですが、少々ご辛抱ください・・・
裏面には日本語で単語の意味と、例文を書いています。「The best --- I could think of〜」と横線が引いてあるのは、少しでもカードを書く負担を減らすために見出し語(expedient)を書くのを省略しているためです。
別のカードでは例文を集めています。
「catch 〜 out」という熟語を覚えるためのカードのようですね。下段は定義です(ちなみにsbはsomebody、つまり「人」です)。英英辞典から例を引いてきているようなので、おもての日本語訳は自分で考えたんだと思います。
更には単語だけでは飽き足らず、文法学習にもカードを活用しました。
右下の「p.14」は読んでいた文法書のページ数です。
ごちゃごちゃ書いてありますが、つまり「fishのような集合名詞は、単数系も複数系も語形が変化しない」という文法項目があり、それにまつわる例文を書いています。
これをどう使うかというと、文法を強く意識しながら例文を音読、暗唱します。具体例を通じて、ケーススタディで文法を学ぶという方法です。僕は江川泰一郎『英文法解説』という本をこの方法で通読しました(名著です)。読んでいて少しでも「へー」と思ったことはすぐさまカードに書き写し、後日(朝の頭が冴えている時間に)まとめて音読しました。
どのカードも複数回音読しましたし、覚えられないカードはそれだけを集め、また音読・・・ということを繰り返しました。大学生で時間があったのでできた方法だと思いますが(半年くらいかかったような)、かなり効きました。これを終えた時には洋書が随分と読めるようになっていて、しばらくは本の内容よりも英語の本が読めるという事実に興奮してひたすらに多読をしていました。やればやるほど英語力がつくということが感じられ、英語学習が完全に軌道に乗り、語学力がメキメキ伸びた時期だったと思います。
そんなこんなで単語カードはどんどんたまりました。
千枚は間違いなく超えています。カードを買うのは文房具屋まで行かないといけないしそれなりにお金もかかるし、書くのも時間はかかるし手が疲れて大変だけど、間違いなく効果を実感していたので頑張って作り続けました。
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何もカードを頑張って作ったことを自慢したくてこんなことを書いているわけではもちろんありません。そうではなく、電子辞書を触っていたある時、ふと気付いてしまったのです。「あれ、カードでやっている作業、電子辞書なら一瞬できるじゃん」と。
例文という具体例を中心に単語や文法項目を覚えられるという点では、紙のカードやノートなどに書き写す方法は理にかなっていると思います。しかしながら、カードを作る作業が大変すぎました。書いただけでは単なる作業なのでそこで終わってはダメですが、紙だとそこで終わってしまいかねません。単語や文法はとにかく相当な数になるので作業効率は非常に重要です。勉強方法の改善は常に意識しなければなりませんが、その点で紙のカードやノートには大きな限界があったのです。
それと比べ、電子辞書を使った方法は圧倒的に作業負担が少なく、肝心要の覚えることに時間を割けます。単語なんてボタンを押すだけです。例文を探すのは少し時間がかかりますが、カードに比べたら全然あっという間です。これを思いついた時は我ながら革命的だと思いました。どんな本にも書いていない、すごいことを思いついてしまったという興奮とともに、今までカードに費やしてきた時間はなんだったんだという、笑いたいような泣きたいようなよくわからない気分でした。
カードやノートも悪くはありません。実際に僕は大きな恩恵を受けました。例文中心に覚えるという、学習法の核心部分を思いついたのは、カードのおかげです。ただ、せいぜい数百枚程度が限度だと思います。僕がやったように「この本に書いてあることを片っ端から覚えたい」という場合なら、カードは有効です。僕自身、割と最近も、冠詞についての本を読んで、とてもよい例文がたくさん載っていたので、それらをPCで書き起こして印刷し、音読するということをしました。それなりに時間はかかりましたが、とても有益だったと思います(いつかご紹介します)。しかし単語となると下手すると数千単位で覚えなければならないため、またカード1枚には収まらない単語も多々あるため、英単語をカードで覚えるのは非効率でお勧めできません。
調べるだけならアプリなど便利なツールも出ていますが、単語学習のためなら電子辞書の優位は揺るぎません。僕はやはり電子辞書が最高の単語学習ツールだと断言したいと思います。
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